2008年07月01日

環境[黄砂]

環境用語黄砂


黄砂(こうさ)とは、東アジアや中央アジア内陸部の砂漠または乾燥帯|乾燥地域の砂塵が、風|強風を伴う砂嵐などによって上空に巻き上げられ、主に春を中心に東アジアなどの広範囲に飛来し、(日本ではおおよそ3月から5月)地上に降り注ぐ気象現象のことである。



概要

黄砂」という語でひとくくりにされる黄砂であるが、この語を気象学的に定義すると複数の現象が含まれていることがわかる。発生地付近では黄砂の源となる「砂塵嵐」(砂嵐)、大気中を浮遊する黄砂は「エアロゾル」(浮遊粉塵)であり、風の有無にかかわらず黄砂が空中に大量に浮遊・降下している状態は「風塵」や「煙霧」・「ちり煙霧」、黄砂による大気の見通しの悪化は「視程障害」である。また、降り注ぐ砂自体のことも「黄砂」と呼ぶ。また、東アジア各国では気象機関がそれぞれ「黄砂」の定義を定めているが、いずれも少しづつ異なってい\xA1 $k!J#各国の黄砂|後節参照)。発生地で、乾燥や強風などといった気象条件が整えば、一年中いつでも発生する。また、黄砂の強さ、気流などの条件によって、黄砂が到達する範囲も異なる。春は、そういった条件が整いやすいことから頻繁に発生し、しばしば砂塵嵐を伴った強い黄砂が発生したり、遠くまで運ばれたりする。黄砂による砂嵐や砂塵(砂ぼこり)の降下は、地域差があるものの、国際的な規模で被害を発生させる。黄砂が大量に降下すると、屋外や屋内の物が汚れ、濃い黄砂によって視界が狭くなったり、人間や家畜などの健康にも影響が出たりする。一方で、黄砂による砂塵の運搬が、自然環境の中で重要な\xA1 Lr3d$r2L $?$7$F$$$k$3$H$b;XE&$5$l$F$$$k$[$+!"黄砂のもたらす独特の景観などが文化にも影響を与えている。発生地に近いほど黄砂の濃度は濃く、粒の大きな黄砂が増え、飛来する頻度も高くなり、被害も大きくなる傾向にある。ひどい黄砂の時には、住民の生活や経済|経済活動に多大な支障が出る地域がある。モンゴル国|モンゴル、中華人民共和国|中国、大韓民国|韓国などがそうであり、黄砂への対策や黄砂の防止が社会的に重要となっている。一方で、被害が比較的軽い地域では、黄砂の飛来が季節の風物詩とされているところもある。近年は東アジア各国で、黄砂による被害が顕著になってきているとされており、一部の観測データもこれを裏付けている。これに加えて、環境問題への関心が高まっていることなどもあり、黄砂に対する社会的な関心も高まっている。また、黄砂の観測・予測・防止などに関する研究や取り組み、政策への必要性が増して来ている。



黄砂現象の詳説

Image:China 100.78713E 35.63718N.jpg|thumb|center|280px|発生地の衛星画像。中央よりやや上によったところにある、明るい薄茶色の部分。左側からタクラマカン砂漠、ゴビ砂漠、黄土高原。(NASA World Wind)

Image:Taklamakan lrg.jpg|thumb|right|200px|黄砂のもととなる、タクラマカン砂漠の砂嵐を捉えた衛星画像(PD NASA)
3月30日と3月31日|31日に撮影(PD NASA)
Image:S2001080041432.L1A HJMS.ChinaDust md.jpg|thumb|right|200px|風に乗った黄砂が写る衛星画像、2001年3月21日(PD NASA)


[ 発生地 ]

代表的な発生地としては、西からタクラマカン砂漠(中国西部)、ゴビ砂漠(中国北部・モンゴル南部)、黄土高原(中国中央部)の3つが挙げられる。しかし、中央アジアや東アジアの広い範囲に分布するこの他の砂漠や乾燥地帯も発生源となっているのではないかと見られている。以下に、すでに挙げた3か所以外で発生源と考えられている主な乾燥地帯を挙げる。

  • サルイイシコトラウ砂漠(カザフスタン東部)黄砂の移流・拡散 Q&A 黄砂解析鹿児島グループ。

  • グルバンテュンギュト砂漠|グルバンテュンギュト(古爾班通古特)砂漠(中国新彊ウイグル自治区)

  • クムタグ砂漠|クムタグ(庫姆塔格)砂漠(新彊ウイグル自治区〜甘粛省)(参考::zh:庫姆塔格沙漠|中国語版ウィキペディアの記事)…タクラマカン砂漠に隣接し、拡大により1つの砂漠につながりつつある。前進する砂漠との戦いに敗れつつある中国 レスター・R・ブラウン、2003年6月。

  • オルドス砂漠|オルドス(鄂爾多斯)砂漠(中国内モンゴル自治区)

  • バタインジャラン砂漠|バタインジャラン(巴丹吉林)砂漠(同上)(参考::zh:巴丹吉林沙漠|中国語版ウィキペディアの記事)

  • トングリ砂漠|トングリ(騰格里)砂漠(同上)(参考::zh:騰格裡沙漠|中国語版ウィキペディアの記事)「大気エアロ?/a>ルの計測手法とその環境影響評価 手法に関する研究」の概要] 西川雅高、環境儀 No.8、国立環境研究所。

  • ウランプハ砂漠|ウランプハ(烏蘭布和)砂漠(同上)(参考::zh:烏蘭布和沙漠|中国語版ウィキペディアの記事)黄砂発生源地域で、生態保護事業に成果 内蒙古 人民網日本語版、2005年4月1日。

  • ソニド盆地|ソニド(蘇尼特)盆地(同上)

  • ホルチン砂漠|ホルチン(科爾沁)砂漠(同上)(参考::zh:科?沁草原|中国語版ウィキペディアの記事)(気象庁―環境部 食い違う黄砂予報 ヨ・ウンチャン, 小池貴子、連合ニュース(ENVIROASIAによる翻訳・再配信)、2004年2月27日。

  • フンサンダク砂漠|フンサンダク(渾善達克)砂漠(同上)

  • ムウス砂漠|ムウス(毛烏素)砂漠(同上)(参考::zh:毛烏素沙漠|中国語版ウィキペディアの記事)西北地区の農民、砂漠の周縁地帯で野菜を生産 チャイナネット、人民日報日本語版、2006年07月15日。

  • ツァイダム盆地|ツァイダム(柴達木)盆地(中国青海省)中国北部に再び黄砂 今月4回目に 人民網日本語版、2006年5月18日。
    上に挙げたものの中には、ゴビ砂漠周辺に多数分布する中小規模の砂漠が多く含まれているが、まとめてゴビ砂漠に含めることもある。また、中国東北部(旧満州)、モンゴル北部、ロシアの一部なども発生源となっている可能性が指摘されている砂漠化する中国、「スーパー黄砂」韓国到来も(下) パク・ウンホ、『朝鮮日報』日本語版、2008年3月18日。。飛来する黄砂の分析結果から、発生地は砂漠のみであるとする説、砂漠以外の乾燥した地域であるとする説、その両方であるとする説の3つがある(#黄砂の成分・形状|下の項参照)。ただし、砂が舞い上がる条件が整えばどこでも発生しうると考えられており、必ずしも前述の場所が発生地とは限らない。実際に、アジアの広い地域で黄砂のような砂の舞い上がりが発生している異常気象レポート2005 黄砂とは 気象庁。


    [ 発生から落下まで ]

    黄砂の強さ(濃度や砂嵐における風速)、黄砂が移動するルート、黄砂が到達する範囲は、地上や気象の状態によって異なる。ただし、発生地が近いほど、特に発生地の東隣にある地域ほど、黄砂に頻繁に見舞われ、黄砂も強くなる傾向にある。黄砂問題検討会報告書 環境省、2005年9月。黄砂の主な発生地域は、おおむね年間降水量が1 E-1 m|500mmを下回り、所によっては100mm以下という乾燥地帯である乾燥地とは 井上光弘 鳥取大学乾燥地研究センター 緑化保全部門・土地保全分野、2007年5月13日閲覧。。そのため、地表が砂で覆われている地域では、風により簡単に砂が舞い上がってしまう。砂が舞い上がる条件として、タクラマカン・ゴビ・黄土高原において上空1 E0 m|10mの平均風速が数量の比較 (速さ)|5m/s以上、砂塵嵐(ダストストーム, Dust storm)となる条件として、ゴビで10m/s、タクラマカン・黄土高原で6m/sという研究結果がある。またこれらに加えて、強い黄砂となる条件として、上昇気流があること、発生地の日差しが強いこと、といった短期的な気象条件も挙げられる黄砂問題検討会中間報告書 環境省・海外環境協力センター、2004年9月3日。  #$^$?!"<~0O$r;3L.$K0O$^$l$?%?%/%i%^%+%s:=Gy$J$I$N9bDc:9$,Bg$-$! $H/@8CO$ G$O!"$[$\KhF|F1$8;~4VBS$K;3C+Iw$H8F$P$l$k6/Iw$,?a$-!"黄砂の舞い上がりを助長しているとの考えもある。このような強い風が吹くと、砂が地上付近から上空高くまで巻き上げられ、沙塵暴(簡体字で「沙?暴」、読みは「シャチェンバオ」、日本語の砂塵嵐にあたる)と呼ばれる激しい砂嵐となる。砂が巻き上げられる高さとして、最大で上空1 E3 m|7〜8kmという観測結果があるが、観測装置が故障することがあるためこれが平均的な値かは不明である
    ただし、単に砂が舞い上がると言っても、砂塵の粒の大きさによってその動きはまったく違うものになる。粒の直径が約1mm以上のものは回転運動(左図1)、1mm〜0.05mm(50μm)くらいのものは躍動運動、約0.05mm以下のものは浮遊運動をするといわれている。回転運動をする砂は発生地周辺のみに到達し、移動する砂丘を構成する。躍動運動をする砂は一時的に舞い上がって移動し、沙塵暴のほとんどを構成する。浮遊運動をする砂は風に乗って移動し、遠くまで到達する。浮遊運動をする砂の運動を詳しく見ると、砂嵐によって巻き上げられた後、日中暖まった空気が上昇することによって起きる上昇気流に乗って、上空500m〜2km付近に上昇して移動する。発生地付近では、黄砂の濃度や粒子の大きさがバラバラで非常に複雑な分布であるが、離れるに従って高度1〜2km付近に濃度が高い層ができる傾向にある。この付近の上空500m〜2kmより下の大気は大気境界層といい、空気の流れが複雑な層で\xA1 $"$k!#$3$l$h$j>e$K$O<+M3Bg5$$H$$$&AX$,$"$j!"0lIt$NN3;R$,$3$NAX$K$^$G>e>:$7$F$/$k$H!"0BDj$7$?B.$$5$N.$K>h$C$F1s$/$^$G1?$P$l$k!#$?$@!"Dc5$05$,H/C#$7$J$,$i0\F0$9$k$J$I$7$F!"7c$7$$Iw$K$h$C$F6u5$$,$+$-:.$<$i$l$?>l9g$O!"$b$C$H9b$$9bEY$K$b9bG;EY$NAX$,$G$-!"F|K\>e6u$G$b:GBg$G9bEY6〜7kmまで高濃度の層ができるなどして遠くまで運ばれることもある。
    東アジアや中央アジアなどの広い範囲には偏西風が吹いているため、黄砂は北や南にずれながらも全体的に東に流される。気圧配置によっては、西に流されることもある。こういった過程を経て粒の小さな黄砂が落下していくが、北京市|北京では粒子の直径がおよそ4〜20μm、発生後3〜4日経って到達する日本では4μm前後となり、大きなものほど早く落下するコラム「黄砂の話」 西川雅高、環境儀 No.8、国立環境研究所。。ただ、発生地付近で大規模な砂嵐が発生したとき、必ずしも朝鮮半島や日本などに黄砂が飛来するわけではない。黄砂の量や移動経路は天\xA1 8u$KBg$-$/:81&$5$l$k$?$a$G$"$k!#Image:Sandstorm.jpg|left|thumb|参考画像・イラクで発生した砂塵嵐(地域は異なるが黒風暴と同じ現象)
    沙塵暴は時に、非常に強い砂嵐に発達することがある。中国の気象当局は、瞬間風速25m/s以上で視程が50m以下の沙塵暴を「黒風暴」(カラブラン, Kara Bran)または「黒風」と規定しており、俗に「黒い嵐」などと呼ばれている。黒風暴は、寒冷前線の通過時などの大気が不安定になったときに、メソサイクロンの発達とともに成長する砂塵嵐であり、数十〜数百kmの大きさに成長した砂塵嵐が大きな渦を巻きながら移動していくものである。これが押し寄せてくると、高さ数百mの「砂の壁」が迫ってくるように見える。「砂の壁」の中に入ると、急激に周りを飛ぶ砂の量が増え、(昼間であれば)次第に周囲が黄み・赤みを増しながら暗くなり、風も強まってくる。数十分ほど屋外は真っ暗となり、あるくことさえままならない状態となる一方、屋内に避難していても砂の進入によって日常生活が難しいほどになる。黒風暴の発生はごく稀ではあるが、最近では1993年5月5日に発生して甚大な被害を出した(後節で詳しく解説)。BS世界のドキュメンタリー シリーズ 中国『黄砂の脅威 前編 繰り返される黒い嵐』『黄砂の脅威 後編 湖が砂漠に変わるとき』、NHK、2008年4月3日・4日放送(CCTVが2004年に製作した『砂塵暴』より)。


    [ 発生量と天候・季節 ]

    黄砂の年間発生量は、年間数量の比較 (質量)|2億〜3億tで、降下量は日本で1年間に1km2あたり1〜5トン|t、北京で1ヵ月間に1km2あたり15t程度と推定されている黄砂の話 長崎県衛生公害研究所、2008年4月19日閲覧。。ただしその量は、発生地の天候に左右されると考えられている。発生地で降水量が多いとその後の黄砂は減り、逆に降水量が少ないと、黄砂が増える傾向にある。降水量によって、土壌の乾燥状態、積雪や植物の有無といった地面の状態が変化するためである。しかし、黄砂の量は降水量よりもむしろ嵐による\xA1 6/Iw$NDxEY$dIQEY$K:81&$5$l$k$3$H$,B?$$!#8=:_!"黄砂の大部分は、発生地である乾燥地帯を襲う砂嵐によるものだと考えられている。そのため、強い低気圧が通過した前後などは砂嵐が多く発生し、黄砂の量も多くなる。また、砂粒の大きさなども関係しているとされる。時期としては、春に最も多く発生する。降水量が少なく地面が乾燥する冬は、シベリア高気圧の影響で風があまり強くない穏やかな天候が続き、乾燥地帯の表土は積雪に覆われて飛ばされにくくなるため、黄砂が発生しにくい。春になると、表土を覆った積雪が融け、高気圧の勢力が弱まる代わりに偏西風が強まり、低気圧が発達しながら通過するなどして風が強い日が増え、黄砂の発生も増えるためと考えられている。春の中盤に入り暖かくなってくると植物が増え、夏になると雨が多くなるため、土壌が地面に固定されるようになって次第に黄砂の量は減り\xA1 !"=)$K:G >/$H$J$k。参考として、新彊ウイグル自治区での砂塵嵐の日数を調べた統計では、最多の4月に年間の約20%が集中し、3月〜6月の4ヶ月間に年間の約70%が集中する。敦煌市|敦煌から河西回廊での砂塵嵐の日数を調べた統計では、春の3ヶ月間に年間の5割弱が集中する。ただし、秋にも約1割の発生があり、年間を通して発生していることも読み取れる。また近年、地上では視程も低下しないため黄砂として観測されない時に、自由大気(自由対流圏)と呼ばれる層で薄い黄砂が観測されることがわかってきた。これは「バックグラウンド黄砂」と呼ばれている。バックグラウンド黄砂の特徴として、発生地付近で砂嵐の発生が無く、黄砂を巻き上げて院 ?$VDc5$05$NH/@8$bL5$$>uBV$K$b4X$o$i$:!"H/@8$9$k$3$H$,5s$2$i$l$k!#$3$l$O!"IaCJCO>e$G$[$H$s$I黄砂が観測されない夏や秋にも発生し、高山では酸性霧の中和に関与していることが解明されてきている。また、バックグラウンド黄砂の成分の特徴として、通常の黄砂ではCa(カルシウム)が主にCaSO4(硫酸カルシウム)の形で存在しているのに対して、バックグラウンド黄砂では主にCaCO3(炭酸カルシウム)の形で存在していることが挙げられる。これは、バックグラウンド黄砂が、地上から排出される大気汚染物質に含まれているSO42-(硫酸イオン)とほとんど混ざっていないことを示している。[https://www.asahibeer.co.jp/csr/philanthropy/ab-academic/image/pd! f/report2006/env_08.pdf アジアダスト(黄砂)の環日本海域の環境へのかかわりに関する研究] 金潤?, 金潤信, 岩坂泰信、2008年6月22日閲覧。山岳域における霧水中の化学成分にみられた夏期のバックグラウンド黄砂の影響 渡辺幸一, 『天気』52巻7号, 日本気象学会, 2005年7月大気化学セッション(F118)プログラム(F118-P011 「バックグラウンド黄砂の化学的特徴」鈴木一成, 五十嵐康人, 高橋宙, 土器屋由紀子, 赤木右, )


    [ 観測 ]

    黄砂の観測は、気象観測としては目視が中心で、降る砂の量や視程といった大気の状態の観測を基に広く情報が発表される。なお、国際的に通用する気象現象の表現方式である、WMO規定の国際式天気図記号では、以下の11種類が黄砂を表す記号に該当する

  • 06.空中広くちりまたは砂が浮遊(風に巻き上げられたものではない)→

  • 07.風に巻き上げられたちりまたは砂→

  • 08.前1時間内に観測所または付近の発達したじん旋風あり→

  • 09.視程内または前1時間内の砂じんあらし→

  • 30.弱または並の砂じんあらし。前1時間内にうすくなった→

  • 31.弱または並の砂じんあらし。前1時間内変化なし→

  • 32.弱または並の砂じんあらし。前1時間内に濃くなった→

  • 33.強い砂じんあらし。前1時間内にうすくなった→

  • 34.強い砂じんあらし。前1時間内変化なし→

  • 35.強い砂じんあらし。前1時間内に濃くなった→

  • 98.観測時に雷電。砂じんあらしを伴う→研究や大気環境の監視(大気汚染の観測など)を目的とする精密な観測においては、目的に応じてさまざまな計器が使用されている。

  • LIDAR(レーザーレーダー) - 常時無人観測が可能だが、濃度が高い場合は観測できないことがある。

  • 日射計、放射計 - 黄砂等の光学的な性質、粒子の大きさを観測できる。

  • 比濁計(ネフェロメーター)、吸光計 - 黄砂等の光学的な性質を観測できる。

  • パーティクルカウンター、質量濃度計 - 黄砂等の質量、濃度、粒子の大きさを観測できる。

  • 飛行時間/質量分析計(TOF/MS) - 黄砂等の化学的な性質を観測できる。

  • 視程距離計 - 目視と異なり、定量的に視程を観測できる。
    以上は地上に設置する機器である。このほか、広域的な観測ができる人工衛星のデータも利用されている。また、飛行機、ヘリコプター、気球、船舶を利用した観測、2,000m以上の高地(対流圏|自由大気と呼ばれる大気の層で地面との摩擦が無いため、大気が他とは異なった流れになっている)での観測、黄砂粒子のサンプルを採取した分析などが行われている



    黄砂の変化と歴史




    [ 地質調査による解析 ]

    古くは、日本では少なくとも7万年前以降の最終氷期には黄砂が飛来していたと考えられている。7万年前〜6万年前ごろの風送ダスト(風によって運ばれ、堆積した砂や塵のこと。黄砂もこれに含まれる。)の堆積量は10立方センチメートル|cm²あたり12g、1万年前〜現在までの完新世における同3〜4gの3〜4倍と、かなり多かったと推定されている。このほか、1万8千年前にも黄砂の堆積量が増えている。気候との関連については、地球が寒冷期にあるときには乾燥化が進むため黄砂が増加し、温暖期にあるときは湿潤化が進むため黄砂が減少したと推定されている。2千年紀(過去1000年)間の中国での塵の降下頻度の記録から、塵\xA1 $N9_2e>:$H5UAj4X4X78$K$"$k$H$$$&8&5f$,$"$j!"$3$N@b$rN"IU$1$F$$$k!#4(Nd4|$K黄砂が増加した原因として、大気の流れの変化により寒気が南下する回数が増え、砂塵嵐の頻度が増えたことが挙げられている。また、現在黄砂の発生源となっている黄土高原は、250万年前から始まり200万年前から増えた、風送ダストによってできたと考えられている。これら黄砂や風送ダストの量の変化は、気候変動や地殻変動によって、風や降水、地形などのパターンが変わったことによるものと考えられている。また、日本の南西諸島にはクチャ(学術名島尻層泥岩)と呼ばれる厚さ約1,000mの泥岩層が分布しているが、この層には黄砂由来の粒子が含まれていると考えられている。島尻層泥岩は新第三紀、およそ2500万年前から200万如 /A0$4$m$NCOAX$G$"$j!"$3$N$3$m$K$b黄砂が飛来していた可能性を示唆している。堆積物の分析結果から、最も古い時代では、白亜紀後期に当たる約7,000万年前から発生していたとされている黄砂 林野庁海外協力室、2007年1月。


    [ 文献への登場 ]

    中国では、紀元前1150年|紀元前(BC)1150年頃に「塵雨」と呼ばれていたことがわかっている。史料においてはこのほか、「雨土」「雨砂」「土霾」「黄霧」などの呼称があった。また、紀元前300年|BC300年以後の黄砂の記録が残された書物もある。朝鮮では、『三国史記』に、新羅時代の174年頃の記述として、「ウートゥ(雨土)」という表現が残っている。怒った神が雨や雪の代わりに降らせたものと信じられていた。644年頃には黄砂が混ざったと見られる赤い雪が降ったという記録も残っている。日本では江戸時代頃から、書物に「泥雨」「紅雪」「黄雪」などの黄砂に関する記述が見られるようになった。また、俳句の季語としては「霾(つちふる?ばい)」、「霾曇(よなぐもり)」?「霾風(ばいふう)」なども用い\xA1 $i$l$F$$$k!#8E$/$O!"1477年に紅雪が降ったとの記録(『本朝年代紀』による)が残っている


    [ 20世紀からの変動 ]

    近年は黄砂の発生が増加傾向にあるとの報道が多い。地球温暖化や砂漠化の進行を考える上で、黄砂の発生頻度の変化は重要な視点の1つとされているが、正確にその変化を捉えるためには長期的なデータが必要となる。主なデータを以下に挙げる。*タクラマカン砂漠以西を除く発生地では、強風の発生頻度の増加および積雪面積の減少に伴って黄砂の発生頻度が増えている東アジアにおける近年のダスト多発現象とその原因 黒崎泰典 三上正男, 2002, 地球環境, 7, 233-242.

  • 中国北西部では、1960年代から40年間は減少傾向で、特に1980年代から1990年代には大きく減少しているが、1970年代前後は各地で変化にばらつきがある東アジアにおけるダストストーム・黄砂発生回数の変動に関する総観気候学的研究 吉野正敏 鈴木潤 清水剛 山本享, 2002, 地球環境, 7, 243-245.

  • 中国華北地方では1990年代までは減少の一途をたどっていた黄砂現象?中国北部では減少傾向に 国家気象センター 人民網日本語版、2004年8月11日(チャイナネットによる)。ものの、2000年代に入って増加している。

  • 韓国では、過去約100年間のデータから、1930年代後半から1940年代前半にかけて、黄砂の発生頻度が1990年代後半以降と同程度かそれ以上であったこと、1940年代後半から1950年代頃までは減少傾向で、それ以降増加傾向であり、晩秋から早春にかけての発生頻度が増えている最近100年間の韓国における黄砂観測日数 全映信 金相源 趙慶美 金正淑, 2002, 地球環境, 7, 225-231.

  • 日本の気象庁の観測では、1967年の観測開始以降、2002年に黄砂観測の日数・延べ日数が共に最多を記録したが、年ごとの変化が大きいため長期的な変化傾向ははっきりと判明していない黄砂観測日数の経年変化 気象庁、2007年1月17日更新の情報。

  • 発生頻度の変化とは別に、激しい砂塵嵐や濃度の高い黄砂の増加が見られるとの研究もある。総じて、韓国では1950年代以降、中国では2000年代以降に増加傾向にあるといえる。ただし、年ごとに発生の頻度や強さ、発生パターンなどは変動している。変動の主な原因としては、降水量の変化や積雪面積・積雪期間などが大きいとされている。しかし、中国での過剰な放牧や耕地拡大などがその増加の原因の一つとの説がある上、今現在中国国土の18パーセントが砂漠と化しており、環境問題としてとらえられる場合もある。中国政府や地方政府が土地の乾燥化に拍車をかけるような政策をとるなどして、乾燥地域の拡大につながっているとの指摘もある。また、水質汚染|汚染された排水や廃棄物によって土壌が汚染され、植物が枯れて乾燥化を進めている例もある。カザフスタンでは、アラル海の例を見ると分かるように、農業政策の失敗により地下水や湖水をくみ上げすぎるなどして、土地の乾燥化が進んだ。また、内モンゴル自治区などでは、過放牧や工業汚染によって乾燥化が進み、 (B黄砂の新たな発生地になりつつあるといわれている。そのほかにも、地球温暖化により内陸部の降水量減少や気圧配置の変化が引き起こされ、それらが乾燥化や強風の増加をもたらして、黄砂の増加に関係しているとの考えもある。また、エルニーニョ現象と黄砂発生頻度の関連性も指摘されている。ただし、黄砂黄砂被害の変化と、その原因とされる自然環境の変化や人為的な要因については、まだ不明な点もある。また、黄砂とは別の問題である大気汚染などが、黄砂の悪影響を増大させている側面もある。


    [ 類似の現象 ]

    黄砂などの砂塵も含めた大気中の微粒子)の分布。中国〜インド〜アラビア半島〜ギニア湾岸と、マレー諸島で多い。
    類似の現象としては、アフリカ・サハラ砂漠からの乾燥した高温風(リビア名ギブリ、イタリア名シロッコ)、ギニア湾岸からベルデ岬付近の地域で吹く乾燥した冷涼風ハルマッタン、スーダンの砂嵐ハブーブ、エジプトの乾燥した高温風ハムシンなどがあり、砂嵐を伴うことが多く、黄砂によく似ている風・嵐 字典 あいねっと作詞教室 言葉の抽斗、2007年5月20日閲覧。。シロッコは砂塵の混じった赤い雨を降らせたり、地中海に広く分布する赤土の起源になっていると考えられており、黄砂との類似性がある。ただし、これらは黄砂とは異なり、風や砂嵐の名称である。また、黄砂のような砂塵の大規模な発生地帯には、中央アジア(黄砂など)、アフリカ(ギブリ・シロッコなど)のほかに、北アメリカ、オーストラリアなどがある黄砂現象に関する最近の動き−自然現象か人為的影響か古くて新しい問題の解決に向けて− 山本桂香 科学技術動向研究センター、2006年7月。



    黄砂の形状と成分




    [ 形状 ]

    日本など発生地から遠くに飛来する黄砂の粒の大きさは1 E-7 m|0.5?m(マイクロメートル)〜1 E-6 m|5?m(=0.0005mm〜0.005mm)くらいで、タバコ製品|タバコの煙の粒子の直径 (0.2〜0.5?m) よりやや大きく、人間の赤血球の直径 (6〜8?m) よりやや小さいくらい。この大きさの粒は、地質学においては砂というよりも「泥」に分類される。中国で観測されるものは粒の大きいものが多く、日本で観測されるものは粒の小さいものが多い。1934年に中国から日本にかけて行われた調査では、粒の大きさは0.001mm〜0.5mmのものが多かったという(光学顕微鏡による調査のため微小な粒子は観測できない点に注意)。1979年に名古屋で採取された黄砂の分析では、おおむね1μm〜30μmのものが多く4μmくらいの粒子が最も多かった。こういった調査により、黄砂の粒子\xA1 $O!"G4EZN3;RF1;N$,6E=8$7$?$j!"$d$dBg$-$$9[J*$NN3;R$KG4EZN3;R$,IUCe$7$?$j$7$F$G$-$?$N$G$O$J$$$+$H?dDj$5$l$F$$$k黄砂の色は、黄土色、黄褐色、赤褐色などに近い。


    [ 組成と成分 ]

    組成を見ると、主に石英、長石、雲母、緑泥石、カオリナイト、方解石(炭酸カルシウム)、石膏(硫酸カルシウム)、硫酸アンモニウムなどからなる。砂漠に多く黄土には無い石膏が含まれていることから、黄砂は砂漠由来であるとする見方があるが、石灰岩などの主成分である炭酸カルシウムが硫酸アンモニウムと反応して石膏となることが知られており(次の文で詳説)、必ずしも砂漠由来であるとは限らないとする見方もある。2002年4月に黄砂の発生・飛来地域で行われたエアロゾルの成分分析では、カルシウム鉱物に占める石膏の割合が、東の地域にいくほど増加したという調査結果がある黄砂の意外な役割 高エネルギー加速器研究機構、2006年10月12日。。粒子の種類によって度合いは異なるものの、黄砂は空気中のさまざまな粒子を吸着する。北京など中国の主要都市では、黄砂が増加する冬季にエアロゾルの量が増加するためその多くが黄砂であると考えられているが、黄砂発生地の土壌・エアロゾルと中国主要都市のエアロゾルの成分を比較すると、後者のほうが硫酸イオンや硝酸イオン、重金属である鉛の濃度が高くなっていた。また実験により、黄砂の粒子が触媒となって、二酸化硫黄ガスが黄砂粒子の表面に吸着されて反応し硫酸イオンになることや、中国主要都市の大気に多く含まれる硫酸アンモニウムが、湿度が高いときに黄砂に吸着され、黄砂中のカルァ 7%&%`$,%"%s%b%K%"$HCV49H?1~$7$FN2;@%+%k%7%&%`!J@P9Q!K$K$J$k$3$! H$bJ,$+$ C$?黄砂は上空を浮遊しながら次第に大気中のさまざまな粒子を吸着するため、その成分は発生する地域と通過する地域により異なると考えられている。中国・韓国・日本などの工業地帯を通過した黄砂は硫黄酸化物や窒素酸化物を吸着すると考えられているが、中国と日本の茨城県つくば市でそれぞれ採取された黄砂の成分調査によると、つくば市のものは二酸化窒素(NO2)や硫酸水素(HSO4)が増加しており、これを裏付けている黄砂粒子が大気環境に与える影響の解明を目指して 名古屋大学太陽地球環境研究所大気圏環境部門 松見研究室、2006年5月12日。。2001年にアジアの黄砂発生源を3つに区分(中国西部・中国北部・黄土高原)して行われた黄砂の成分分析では、質量が多い順にケイ素が24〜30%、カルシウムが7〜12%、アルミニウムが7%、鉄が4〜6%、カリウムが2〜3%、マグネシウムが1〜3%ほどを占めた。このほか、微量のマンガン、チタン、リンなどが検出されたCharacterization of soil dust aerosol in China and its transport anddistribution during 2001 ACE-Asia X.Y.Zhang, S.L.Gong, Z.X.Shen, F.M.Mei, X.X.Xi, L.C.Liu, Z.J.Zhou, D.Wang, Y.Q.Wang, Y.Cheng, JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH, VOL.108, NO.D9, 4261, 2 May 2003,DOI:.(The Dust Club,Articles on Dust Stormsによる)。鳥取県衛生環境研究所の調査では、2005年4月に黄砂を粥 ^$`Bg5$C f$N@.J,$rD4$Y$?$H$3$m!"J?6QCM$KHf$Y$F%RAG$,22倍、マンガンが13倍、クロムが7倍、ニッケルが3倍という高い数値を記録しており、黄砂の飛来時には大気の成分が通常とは異なることを示唆している『読売新聞』 2006年6月18日付の記事による。。韓国で同国の農村振興庁が黄砂を採取して行った検査では、地域差があるものの、細菌の濃度が通常の大気の7〜22倍、カビの濃度が15〜26倍と高かった。黄砂が飛来するときに細菌やカビを吸着し、それが繁殖しやすい気温や湿度となるためではないかとされており、人間や家畜・作物への影響が懸念されている黄砂」は細菌の塊、中国現地より43倍も高い ファン・ァ X%$%s!"JanJanNews、2003年3月19日。。また、同じく韓国で2003年、黄砂の飛来する前後に行われた疫学調査では、尿の成分測定で多環芳香族炭化水素(PAH)に属する発ガン性物質が平均で25%増加したと発表された黄砂に大量の発がん物質 イム・ホ、『朝鮮日報』日本語版、2003年5月21日黄砂の後にムギ|麦の病害である黒さび病が増加することは日本で知られていたが、研究により同じく麦の病害である黄さび病の胞子も毎年黄砂とともに日本に飛来することが分かっている。黄砂(こうさ) \xA1 2-Fl5$>] Bf!"2008年4月19日閲覧。麦 -高品質化に向けた技術開発- 3.病虫害抵抗性育種・防除技術 2.さび病類 (2)防除技術の開発 齊藤初雄、『農林水産研究文献解題』No.23、2000年3月。肺に入ると炎症を起こす二酸化ケイ素|シリカや、カビの菌糸体を構成するグルカン#βグルカン|βグルカンなどが含まれているという研究結果もある黄砂アレルギーについて ハッピー夫婦ドットコム、2007年4月5日閲覧。。大気中を進むうちに、日光に含まれる紫外線によって、細菌の一部は死滅すると考えられているが、化学物質が分解されて有害なものになることも懸念されている。



    黄砂による影響

    を襲った黄砂嵐の跡。車に砂が積もっている。()

    黄砂によって、以下に挙げるようなさまざまな被害が確認されている。確認されている被害範囲は東アジアの広範囲に及ぶ。モンゴル、中国、韓国では、黄砂による被害は大きな社会問題となっている。日本では、これらの諸国に比べて被害は軽く、環境問題として取り上げられることが多い。発生源から離れた地域に被害を及ぼす、国境を越えた環境問題の典型的な例の1つで、中国などの経済発展と密接に関連しており、政治的な対策が鍵を握るとの見方もあり、一部では"Yellow dust terrorism"(黄砂テロリズム)と呼ぶ向きもあるYellow dust terrorism Andrew Leonard, Salon.com Technology, 17:51 EST, April 4, 2007.。また、黄砂の観測やモデルによる (B黄砂飛散の推定結果などから、東南アジアで発生した煤や一酸化炭素が日本に飛来してきていることも分かり大気化学物質の飛来予測システムの開発 鵜野伊津志、日本経済新聞 地球環境経済人サミット受賞者講演、2003年11月27日。、アジアの広範囲で同様の越境汚染問題が複数あることも分かってきている。


    [ 物理的・経済的被害 ]

    大気中の黄砂の濃度が比較的薄いならば、多少の黄味を帯びた霞が発生し、普段よりも視程|視界が悪くなる程度で、日常生活に大きな支障が出るほどではない。しかし、濃度が高くなった場合は、屋外の風景|景色全体が黄味や赤味を帯びた色に見えるようになって、視界が極端に悪くなるとともに、さまざまな被害が報告されるようになる。被害は黄砂が少量の場合でも発生するが、量が多いほど被害が深刻になる。黄砂が降り注ぎ積もることにより、車や建物の窓、洗濯物が汚れたり、農作物の生育不良を起こしたりといった、物理的被害が最も多い。ビニールハウスや建物の天窓に積もると、遮光障害を起こすことがある。黄砂が雨雲や雪雲に入ると、吸着された黄砂が雨や雪の粒に混じって振ることがある。黄砂には非常に小さい粒子が含まれているので、雨と混じって泥状となり、建物や車などにべったりと付着することがあり、雨に混じらない黄砂のみが付着した場合に比べて汚れが落ちにくい。黄砂が雪に混じると、積雪が黄色や赤色に変色することもある。黄砂は、大気汚染物質などと一緒に大気中に長くとどまり、周辺の雲の色を茶色く変色させ、農作物への被害が指摘されている褐色雲をつくる事もある。大規模な黄砂が発生したときは、気象衛星などの画像に写り込むことがある。濃度が高い場合、視界が悪くなるために航空機の飛行や車の通行、鉄道の運行、人の歩行に障害を及ぼしたり、大気を覆うことによって気象観測を妨害したりする。また、地上波放送などの電波が乱反射し、受信障害や異常伝播を引き起こすこともある。中国や韓国では、黄砂の濃度が高い時には乗用車の速度規\xA1 @)$,9T$o $l$k$3$H$,$"$k!#@:L)5!3#9)6H|精密機械や半導体の工場では、黄砂の微小粒子の侵入により不良品ができるなどの被害も発生する。速度規制や交通の混乱、健康被害などの諸被害によるものや、砂や塵の処理にかかる費用も含め、大きな経済的損失も生じる。黒風暴のような発生地付近での砂嵐の場合には、砂も多く強風を伴うため、建物の倒壊・埋没、電柱の倒壊や電線の切断による停電なども起こる。黄砂の発生地である砂漠の一部では、砂嵐などによって砂丘が移動し、住居が砂に埋まったり、道路が通行不能になるなどして、住むことができなくなった村もあり、被害ははるかに深刻である。


    [ 健康被害 ]

    細かい砂の粒子や、粒子に付着した物質、黄砂とともに飛来する化学物質(#黄砂の形状と成分|前節での説明参照)などにより、さまざまな健康被害が生じる。咳、痰、喘息、ただれ、鼻水、痒みといった呼吸器|呼吸器官への被害や、目や耳への被害が目立つ。黄砂が多い日には、花粉症、喘息、アトピーなどのアレルギー疾患の悪化が見られる。ただし同じ汚染度でも、症状には個人差がある黄砂・大気汚染・アレルギー・病気 岡田上鍼灸院、2008年4月19日閲覧。。1995年〜1998年の春に韓国で行われた疫学調査では、黄砂の飛来時に高齢者の死亡率が2.2%上昇したほか、呼吸器・循環\xA1 4o!&4c2J$NF~1!N($dDL1!N($,>e>:$7$?!#Cf9q$N?7J9$NJsF;$K$h$l$P!":=?P$NHt;6;~$K$OGY$N46@w>I!&?4B!7l4I$N<@IB!&?46Z9<:I!&9b7l05!&G>B4Cf$J$I$NA}2C$,8+$i$l$k$H$$$&!J!X?7@8LV!Y2002年5月28日付記事による)。日本では、疫学的な調査結果がまだない。日本などに飛来する黄砂の粒子は非常に細かいため、肺の末端にまで到達するとされているが、その細かさから到達する量自体はそれほど多くないとされている。また、黄砂自体はアレルギー物質ではないものの、汚染物質が付着したときに何らかの相乗効果を及ぼし、汚染物質が人体に及ぼす悪影響を増幅させている可能性も指摘されている。中国や韓国では、黄砂の濃度が高い場合に、マスク等の着用を奨励したり、外出を控えるよう促したりする情報が、公的機関によって発表されている


    [ 自然環境 ]

    砂や砂に付着した物質によって、土壌や海洋へミネラルが供給され、植物や植物プランクトンの生育を促進する作用もあり、黄砂に土壌を肥やす効果があることも指摘されているJared Diamond, C''ollapse: How Societies Choose to Fail or Succeed'', Viking, 2004.黄砂の成分であるリンや鉄などが、ハワイの森林や海洋のプランクトンの生育に関わっているのと研究結果もある黄砂ってなんですか? 国立環境研究所 NIES、2008年4月19日。黄砂 林野庁海外協力室、2007年1月。。また、黄砂に含まれる炭酸カルシウムには中和作用があり、黄砂の飛来と雨が重なると、雨を中性・酸と塩基|アルカリ性に変える。そのため、酸性雨の被害軽減にも寄与している。しかし、麦の病害である黒さび病や黄さび病の発生を媒介することも知られている。また、黄砂に吸着されて運ばれるさまざまな物質のうち、有毒な物質による生物への被害や環境汚染が問題視されている。黄砂が気候にもたらす影響は多数ある。黄砂の粒子が森林や海洋の上ににあるときは太陽放射を遮蔽する日傘効果(冷却)、黄砂の粒子が雪|氷雪や氷河の上にあるときは太陽光線を吸収して大気を暖める効果(加熱)、黄砂
    の粒子が雲核となって地球上の雲の分布を左右する効果(冷却・\xA1 2CG.!K!" 黄砂に含まれる成分が植物やプランクトンに作用することで炭素循環に作用する効果などがあり、結果的にどう作用するかは現在はっきりと分かっていない。''黄砂 地球を冷やす''『朝日新聞』、2005年1月31日付夕刊第1面。3.2.3 黄砂の気候への影響 気象庁 異常気象レポート2005。


    [ 天体の変色 ]
    上空を舞う黄砂によって、太陽や月などの色が変わることもある。太陽は銀色になったり、青|青色になって同じく青い光冠(光環)を伴ったりする。また、月も青色になって青い光冠を伴うことがある2006年4月8日に観察された青い太陽と青い月 西村昌能、『京都地学』25号, pp.14-15。(参考写真。こういった現象は滅多に目にすることができない珍しい現象であるが、中国北部を始め日本などでも観測例がある。この変色現象は、黄砂の粒子が太陽光の一部を遮蔽して弱め、残りを散乱することで起きる。青の変色はおもにミー散乱によるものと考えられており、同様の原理で火星の夕焼けは青くなる



    黄砂への対策

    がある
    黄砂による被害への対策は各地で行われている。発生地に近い地域では、降り積もる砂を建物内に入りにくくしたり、屋根などに砂が積もって重くならないような工夫などがされている。建物の窓を閉める、建物に入る前に衣服に付着した黄砂をはらう、黄砂の発生後は掃除を行うといった対策が挙げられる有害物質を運ぶ砂……黄砂の成分に注意! 清益功浩、All About、2007年4月16日。。健康面での被害への対策として、黄砂が大量に降っている場合は、砂の微粒子を体内に取り込まないように、眼鏡やマスクを着用する、うがいや手洗い・洗顔を行う、外出を控えるといった処置をとるぁ 3$H$,5s$2$i$l$k黄砂は少なくとも数万年前から発生しており、自然現象であって完全に防ぐことはできないという考え方もある韓国の黄砂被害、年3兆〜5兆ウォン 姜讃秀、『中央日報』日本語版、2007年4月2日。。しかし、人為的な処置によって黄砂の量を減らすことはできるのではないかと考えられており、発生地の砂漠化の防止を中心とした対策が行われている。砂漠化の防止策としては、砂漠緑化と農業|農法の改良が中心となっている。具体的には、適切な植林、効率の良い薪などの燃料の確保、家畜の管理、土壌浸食の防止、灌漑、水資源の有効利用、エネルギーの再利用、適切な土地利用や農法への転換、砂の移動防止などがぁ "$j!"5;=Q3+H/$r?J$a!"@lLg2=$,;XF3$r9T$C$F!":=Gy2=KI;_3hF0$rD94! |4V;}B3$ G$-$k$h$&$K$9$kI,MW$,$"$k砂漠化防止技術と研究 井上光弘 鳥取大学乾燥地研究センター 緑化保全部門・土地保全分野、2007年5月13日閲覧。。中国政府は、「防沙治沙法(防砂治砂法)」の制定(2001年、#ウェブ|リンク参照)により法的に被害防止を行うとともに、自然保護区を設定して植林を行っているほか、防風林|防護林や草方格を用いて砂の移動を防ぐなどしている。また1990年代から、乾燥地域の拡大を抑えるために、内モンゴル自治区での遊牧民の定住化を進めている。あわせて、乾燥地域の住民を強制的に移住させる「生態移民」という政策も行われている。また、モンゴルでも植林などが行われている。しかし、乾燥・砂漠化の進行にはまだ追いついていないこと、定住・移住生活や適切な農業法に関する指導が行き届いていないこと、対策として不十分であるという問題もある。また、過度な植林によって土壌の水分が著しく失われ、乾燥化を悪化させる可能性も心配されぁ F$$$k。灌漑やダムの建設が、中国内陸部の乾燥化の一因であるともされているため、『南水北調』によって水の需要が多い大河の下流に水を供給することで、大河の上中流での水の使用量を増やし、乾燥化を軽減しようとする動きがあるほか、各地で水資源の利用について考え直そうとする動きがある。一方で、乾燥化が進行するスピードに比べて、植林などの対策のスピードが遅く、効果を現すまで時間がかかるため、黄砂対策は実効性を現しにくいという見方もある。また、各地で気象観測の一環として黄砂が観測されているが、観測点に偏りがあることに加え、気象観測だけでは黄砂現象の解明には不十分なため、より精密で計画的な観測が必要となる。これまでは、個人や小規模なグループによる研究が行われてきた。しかし、1990年代に黄砂現象の実態が詳しく分ぁ +$k$h$&$K$J$C$?$3$H$G!" 黄砂の実態把握には、数十年という長期間の監視体制を整える必要があることが次第に明らかになってきた。現在市民向けに提供されている黄砂情報は以下のとおりである

  • 黄砂情報、黄砂に関する気象情報 - 気象庁、気象研究所などによる黄砂情報について 気象庁、2008年3月18日閲覧。

  • 黄砂予報、注意情報(3段階) - 大韓民国気象庁|韓国気象庁による。

  • 砂塵暴予報 - 中国気象局による。翌日までの短期間の予報しかできなかったため、中国科学院(:en:Chinese Academy of Sciences|参考・英語版リンク)によって数値予報システムが開発され、運用が開始された。このほかにも、行政機関や研究機関による大規模なプロジェクトがある

  • ADB/GEF黄砂対策プロジェクト - UNEP・アジア太平洋経済社会委員会|UNESCAP・砂漠化対処条約|UNCCD・ADB・中国・韓国・モンゴル・日本の8者が参加。黄砂対策プラン(#ウェブ|リンク参照)を作成するなどの成果を上げている。

  • 黄砂実態解明調査 - 環境省によるプロジェクト(#ウェブ|リンク参照)。

  • 日中韓3カ国環境大臣会合 - 黄砂問題に関する合意形成も行う。

  • 日中韓局長級会合による黄砂対策協議日中韓三カ国黄砂局長会合の結果について 環境省 報道発表資料、2007年3月14日。

  • 国際ダストストームワークショップ - 黄砂研究に関する国際的な会合。また、モンゴル・中国・韓国・日本各国の多数の大学、研究機関、行政機関が研究や観測に関わっている。複数の国家間で、観測機器や資金の援助、植林や農業指導などの協力も行われている。植林や農業指導については、非政府組織|NGOなどの民間団体が関わったプロジェクトもある。対策が遅れている原因として、各国で黄砂の定義や分類(#各国の黄砂|下の項参照)、黄砂に関する認識に相違点があることが指摘されている。例えば、黄砂による被害は、モンゴルでは砂による害、中国では砂嵐による害、韓国では気象現象、日本では大気汚染と、かなり異なった概念であると考えられている。今後の課題としてぁ O!"COI=$N?eJ,NL$d?"@8$N>uBV!":nJ*$Nu67$J$I$N7QB3$7$?D4::$d!"4QB,5!4o$N@0Hw!"4QB,%G!<%?$N>o;~6&M-2=!"黄砂の定義や分類の統一、黄砂の予測技術の改良、対策の評価などが挙げられている



    各国の黄砂

    各言語での黄砂の名称は以下のとおり。

  • 日本(日本語) - 「黄砂」、読みは「こうさ」で、「おうさ」という読みは誤りである。

  • 中華人民共和国|中国(中国語) - 「黄沙」、「黄砂」、読みはいずれも「ホワンシャ(ピンイン : Hu?ngsh?)」。このほかに「洲粉塵」、「黄塵」、「黄河風」、「中國沙塵暴」といった別名がある。ただし、中国では、「黄沙」などの名称は主に研究者の間で用いられており、一般には日本語の「黄砂」に当たるような黄砂現象全体を表現する言葉がほとんど浸透していない。その代わりに(黄砂による)砂嵐のみを表す「沙塵暴」などが用いられている。

  • 英語圏 - 「''China dust''」、「''Asian dust''」、「''Yellow dust''」、「''Yellow sand''」、「''Yellow wind''」、「''China dust storms''」

  • 大韓民国|韓国・朝鮮民主主義人民共和国|北朝鮮(朝鮮語) - 「??」、「黄沙」、「黄砂」、読みはいずれも「ファンサ」。

  • ベトナム(ベトナム語) - 「''Ho?ng sa''(?砂)」、「''b?o c?t v?ng''」

  • モンゴル(モンゴル語) - 黄砂自体の名称ではないが、黄砂のもととなる砂嵐のことを「トゥイリン」と呼ぶ。英語の名称は、学術分野では言語に差異に関わらず広く使用されている。このほか、歌や詩などに使われる霾(ばい、つちふる、''bai'')などの別名があるほか、「灰西」「赤霧」「山霧」「粉雨」といった地域的な呼び名もいくつか存在する。


    [ 中国・モンゴル ]

    の遠景

    の様子
    まで到達した黄砂の衛星写真
    中華人民共和国|中国では、気象観測において黄砂は「砂塵天気」に含まれ、視程(水平視程)10km以内で風が弱い場合「浮塵」、風が強く視程10km〜1kmの場合「揚砂」、風が強く視程1km以下の場合「沙塵暴」とされている。沙塵暴はさらに3級(弱)、2級(中)、1級(強)、0級(特強)に分類される。特に、瞬間風速25m/s以上で視程が50m以下の場合、「黒風」や「黒風暴」(カラブラン, Kara Bran)と呼ばれている。東部でよく観測され、都市部では、最近の経済発展による大気汚染との相乗効果で、視程がかなり悪くなることがある。北京市|北京や天津市|天津などは発生地とされる砂漠に近く、近年はたびたび大規模な黄砂に襲われている。北京では、間近に迫った北京オリンピック開催に向けて、黄砂の影響が少ない大会開催を念頭に置いた研究や対策が行われて\xA1 $$$k!#H/@8CO$+$iHf3SE*N%$l$?CO0h$G$b!"黄砂による被害を度々受けている。2007年4月2日には、上海市|上海で623?g/m3(マイクログラム毎立方メートル)と過去最大の量の黄砂を観測し、大気汚染指数が500と過去最悪の数値を観測したNorthern dust brings dirty skies in Shanghai、CCTV英語版。。大気汚染指数は0〜500の数値で表され、300以上が「重度」とされており、今回は最悪の数値を記録した大気汚染でブーメラン現象…黄砂が上海を襲撃 2007年4月15日、iza。。華北や東北地方では日常的に指数が100前後と高く、これまでに50! 0を記録したことはあったが、上海で「重度」となったのは初めて\xA1 $N$3$H$@ $C$?Urban Air Quality in China、2001年4月24日、Oliver Wild。。南方の台湾でも最高500?g/m3程度の黄砂が春を中心に観測される。ただ、発生地周辺の中国内陸部やモンゴルでは、黄砂の降下よりも砂嵐による被害の方が大きい。農作物に砂が積もることによる不作のほか、住居に砂が侵入したり、視界不良による事故などで死者が出ることもある。これまでで最も大きな被害は、1993年5月5日に中国北西部(寧夏回族自治区、内モンゴルアラシャン盟、甘粛省)で発生した黒風暴で、死者・行方不明者112人、負傷者386人、家畜・牛馬の死亡・行方不明約48万3千頭、4,600本の電柱が倒壊、被害を受けた耕地21万ヘクタール|ha、森林被害18万ha、経済損失66億円のほか、多くの道路や鉄道が埋没するといぁ &Bg$-$JHo32$r=P$7$?!#;`。この時、甘粛省で22.9mg/m3(22900μg/m3)という記録的な黄砂の濃度を観測している黄砂・砂塵暴の発生、輸送、沈着及び対策に係る研究 日中友好環境保全センター、2003年4月1日。。中国の森林管理局によれば、黄砂の影響を受けている中国人は約4億人で、直接的な被害だけでも540億元(約840億円)に及ぶと言うOperation blitzkrieg against desert storm 2007年4月3日、Wang Ying、China Daily。。また別の推定では、 (B1990年代の! 黄砂(Bに伴う経済損失は年間15億元(Yang および Lu, 2001年)だとされている


    [ 韓国 ]

    大韓民国|韓国では、黄砂はその程度により、強度0、強度1、強度2の3段階に分類されている。2002年4月には、史上最大の2070?g/m3黄砂が降り注いだ。(PM10の観測値を基にした、ソウル特別市|ソウルにおける黄砂注意報発令基準は400?g/m3黄砂警報は800?g/m3以上の状態がいずれも2時間以上続くと予想される場合に発令される。2007年2月10日より変更すると韓国・気象庁から発表されている。「気象庁、黄砂特報・判定基準を強化」(韓国新聞))「1〜 (B2キロほどしか見通しもきかず、呼吸ですら困難なほどであった」と地元新聞は伝えている。2006年4月には2015?g/m3が観測され、空の便も韓国国内便6便が欠航している。韓国気象庁によれば、韓国に飛来する黄砂は内モンゴル、ゴビ砂漠、黄土高原などを中心に発生し、発生からおよそ1日〜8日かけて到達し、最も近い発生源である中国東北地方のものは最短半日で到達する。韓国政府の推定によれば、黄砂の諸影響による同国での経済損失は、年間およそ3兆〜5兆ウォンにも達するという。別の推定によれば、黄砂による医療・福祉面の被害額や黄砂への対策費用は、年間3640億ウォン(Kang, 2004年)だとされている


    [ 北朝鮮 ]

    朝鮮民主主義人民共和国|北朝鮮での黄砂の実態は、同国に関する情報が対外的にほとんど発表されていないため、あまり詳細にはわかっていない。ただ、人体への影響、動植物や農作物への影響、工場などへの影響が発生したり、発生の可能性が指摘されたりしていることが、近隣諸国のメディアによって報道されている北、黄砂で家畜・農作物に被害 朝鮮日報日本語版、2004年3月25日。


    [ 日本 ]

    日本では、気象庁により、黄砂とは大陸性の土壌粒子によって視程が10km以下になる現象と定義されている。特に2月から4月にかけての春先によく観測され、夏に最小となる。西日本や日本海側で観測されることが多い。山脈を隔てて東側となる東日本や太平洋側、内陸部では観測数は少ないが、時々観測される。日本における黄砂濃度の最高値は、黄砂以外も含む浮遊粒子状物質(SPM)の参考値ではあるが、2002年に0.79mg/m3(790?g/m3)という値が観測されている過去の黄砂飛来状況 環境省、2008年4月19日閲覧。。1967年以降、日本での黄砂観測日数\xA1 $OJ?6Q20日程度であるが、2000年から2002年にかけては50日前後と大幅に増加した。日本で黄砂観測に数が増える年は、中国東北地方で低気圧が発達しやすく、西風が強い傾向にある。日本で観測される黄砂は大気がかすみ、微量の砂が積もる程度で、大きな被害はほとんど報告されないが、健康被害は数多く報告されている。気象観測における天気としては煙霧またはちり煙霧に分類される。


    [ その他 ]

    地上からの観測による情報は無いが、衛星画像による観測の解析から、ロシアの沿海州・樺太なども黄砂の通過ルートとなっていると考えられている。遠くで観測された例では、アメリカ合衆国のハワイ州、アメリカ本土、カナダなどがある。2001年4月上旬に発生した黄砂は、同月15日?
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